9月15日

9月15日

川嶋みどり先生がナイチンゲール記章受章

 私の看護の師である川嶋みどり先生が、このほど『フローレンス・ナイチンゲール記章』を受章なさった。先日、学士会館でお祝い会を行い、私も呼びかけ人の一人・事務局長として長年のお礼もかねておもしろく準備・企画させていただいた。

ナイチンゲール記章とは
 「第8回(1907年)赤十字国際会議の勧告及び第9回(1912年)赤十字国際会議の決定に基づいて設立された「フローレンス・ナイチンゲール基金」の事業として創設され、ナイチンゲール女史の生誕100周年を記念して1920年に第1回の記章が授与された。
 記章制定の目的は、傷病者の看護の向上に貢献し、ヒューマニテイ(人道)の精神のもとに、近代看護の礎を築いた女史の偉大かつ崇高なる業績を永遠に記念し、看護活動に顕著な功績を果たしたものを顕彰することにある」(『第41回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式』(日本赤十字社)の冊子より)
 今年は、41回目の受章で、日本で100人目の受章者が、川嶋みどり先生である。

『ナイチンゲール』という人
 皆さんは、ナイチンゲールというと何を思い浮かべますか? 伝記にでてくる有名な看護師? 心優しい従順で献身的な人? そもそもどの時代の人なのでしょうか?
 私は、川嶋先生と出会うまで、ナイチンゲールという人にほとんど興味を持っていませんでした。かえってよく知らないのに、反発する気持ちを持っていました。それは、ナイチンゲールが従順で献身的に戦争に協力させられる「白衣の天使」の象徴と映っていたからです。
 しかし、実は違っていました。川嶋先生と出会い、いっしょに長年勉強会を継続的に行ってきたのですが、ナイチンゲールのことも時間をかけて勉強しました。そしてわかったことは、日本で紹介されている姿とはずいぶん違うということ。ナイチンゲールは、別な意味でスゴイ人! 1820年にイギリスに生まれ、1910年に亡くなった。活躍したのは、1850年代からで、クリミア戦争の時に看護師として戦場にいき、その惨状を解決すべく動いたこと。日本でいうと江戸末期から明治時代にイギリスで活躍した。しかし、彼女は、決して従順な優しい人ではなく、強い鉄の女でした。政治家を動かし政治を変えさせ、統計学の創始者ともいわれているほど事実・データ(エビデンス)をそろえ、公衆衛生学者でもある。うまくいかないと、時々ヒステリーを起こす。90歳まで寝たきりになりながらも最後まで仕事をした人である。
 彼女は、世界中の近代看護の創始者であり、著書は今読んでも新しく、本質的なものだ。彼女のことを書き始めたらきりがないので、ここまでとしますが、『看護』と『介護』の関係、『看護師』と『介護職』との関係について、日本の中であいまいなっている部分があり、また誤解されている部分も多く、一度きちんと理論化しなければならない課題である。そのときにも原点に戻るのは、ナイチンゲールである。『ナイチンゲールから、今、学ぶこと』という本が書けそうなくらい学ぶことが多いスゴイ人! またの機会に議論しましょう!

『川嶋みどり』という人
 ある人がこういった。「川嶋先生は、日本のナイチンゲールよ」と。川嶋先生も本当にスゴイ人なのです! 現在76歳、日赤看護大学の学部長(現役)。とにかく、現場を大事にし、現場から看護学を築き上げようとしてこられた方。468編の論文と124冊の単行本を執筆し、日本の看護界に極めて大きな影響を与えた。看護の2大業務の中で、「診療の補助」(医師の補助業務)ではなく、「療養上の世話」(身の回りの生活上の支援)に看護の専門性があるとして実践・理論化してこられた。
 私は、学生のときに川嶋先生に出会い、川嶋先生が教育婦長(担当)していた柳原病院に就職し、30年間身近でご指導いただいた。私の著作活動のきっかけ・励ましも川嶋先生のお力が大きい。「川嶋みどり名言集」を残そうと私が勝手にいっているが、素晴らしい言葉をいつもjust timeに言ってくださる。たとえば、「大変なときほど、いい仕事ができる」「子育ては量ではなく質よ」「困難なときほどチャンス」など・・・。
 私生活では、優れた家庭人。芸術を愛し、料理は手抜きせず得意で上手。

日本の「看護」はどうなっていくのだろうか? 川嶋先生が、先日こんなことをおっしゃった。「私は、看護一筋に50年余。人生をかけて日本の看護をよくしていこうと頑張ってきたけど、本当に良くなったのかしら? 大学が増え、教育水準も上がったんだけど、本当に現場はよくなったのかしら? もしかすると・・・。死んでも死に切れない気持ちよ・・・」
 日本には、120万人も看護師がいる。現在の日本の看護をめぐる状況は、課題だらけ。お祝い会の席上、ご子息がごあいさつの中でおっしゃっていたが、「ゆっくり、のんびりなんていうことは、母には通じない。たぶん、死ぬまで現役でがんばって、研究し語り、書き、考えていくことでしょう。それが母の生き方でしょう」と。まだ、まだ先生には頑張っていただかなければ。もちろん、後輩の私たちも頑張らなければならいが・・・。
 川嶋先生も鉄の女。でも限りない人間へのやさしさ。
 お祝い会で先生を遠くで見て、「私にとって、この先生の存在は大きいなあ」とつくづく思いました。
                           (9月23日記)

9月15日” に対して1件のコメントがあります。

  1. ワードマップ グラウンデッド・セオリー・

    本書はストラウス派(他にグレーザー派や木下による修正版がある)のグランデッド・セオリー・アプローチによる作業過程を明確に解説したものである。ある医師へのインタビュー結果を材料に、どのようにしてデータを分析し理論を構成するのかという過程を具体的に示しており

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