車中泊待機での在宅看取り支援 

車中泊待機での在宅看取り支援   2016年6月5日分

 高知の訪問看護師の方々や介護職・ケアマネの方々と交流する機会があった。飲みながら普段聞けないようなさまざまなお話を聞くことができて、実に楽しい。そこで聞いた話。いろいろ聞くがこの話ははじめてだった。

車中泊で・・・
「宮崎さん、聞いてください」
「どうしたの」
「3日間、車中泊待機で家での看取りを支援しました!!」
「へえー、すごいわね。長年訪問看護関連の仕事をしているけれど、車中泊しながら利用者の家での看取り支援をしたということは初めて聞いたわ。どういう方で、どういう状況だったの?」
 その概要は次のよう。

呼吸不全で人工呼吸器を使用している方の終末期
 80歳代後半の男性。人工呼吸器を使用した状態が長く(数年)、ずっと入院生活だった。遷延性意識障害で意思表示はできない状態。元気なころから「器械や管を入れられて生きるのはいやだといっていたが、その状態での長い入院生活になってしまった。家族はいつもそのことを気にしていた。
 時がたち、衰弱が激しくなり、いよいよ終末期になり、家族は「もうあまり長く生きられない。たぶん数日以内だろう」との説明を受けた。それだったら、大好きだった家に退院し、そして家で死なしてあげようということになった。
 しかし、この方の家は、中山間の過疎地。訪問診療や訪問看護をしてくれる事業所がないと退院できない状態。それで某訪問看護ステーションに依頼があった。ステーションから利用者宅まで自動車で片道ゆうに40分。山道の往復。ステーションの所長は依頼を受けるかどうか迷った。通常の訪問は二ではなかったからだ。でも、その利用者と家族のことを思うと、自分が頑張れば最期の望みを叶えらことができるのであれば、何とか頑張ろうと受けた。

家族の不安

 自宅退院のための準備をし、病院での医療の内容をそのまま継続する形となった。所長は、点滴などが本当に必要かどうかと疑問だったが、主治医が在宅での医療にあまり慣れていないようで、最後の最後まで治療をするという方針だった。
 無事退院したが、人工呼吸器を装着した状態での在宅療養に家族は不安いっぱいで、ちょっとしたことでも夜中でも電話で呼ばれた。

8日目に永眠

 家族が安心して看取れるように、呼ばれたらすぐに訪問できるようにしようと決めた。家族は、「夜の真っ暗な道を一人で40分かけて訪問するのは大変でしょうから、家に泊まって仮眠しながらいっしょにお願します」といってくれるのだが、家族だけの最期の団欒を邪魔してはいけないように思い、結局、車中泊となったのだそうだ。
 退院後8日目、車中泊3日の時、静かに永眠された。

誠意・熱意のかたまりの訪問看護師

 全国の訪問看護師に出会い、さまざまなお話を聞く機会がある。いつも思うことだけど、訪問看護師は、患者・利用者・人間に対して熱い思いで心を込めて支援する(しすぎるともいえるほど)方が多い。ありがたいと思うし、うれしく誇りにも思う。